物語でサクッとベンサム『道徳及び立法の諸原理序説』#25

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〇登場人物紹介  

★黒島よしのぶ  

いつも黒色ベースの服装に黒縁眼鏡を基本装備とした渋み溢れる人物。大学の先生らしく、近くのカフェでコーヒー片手に哲学書を読んでいることが多い。  

碧山アカリ  

趣味で哲学、文学、心理学といった人文書を読み漁っているお姉さん。黒髪セミロングに切れ目とクールな見た目だが、困っている人を見ると放っておけない性格。   

川崎こうへい  

アカリの隣の家に住む中学生。学校や両親との関係などなど年相応の悩みをもっており、アカリが良き相談相手になっている。  

★藤山リカ  

社会人一年目の新卒。やや神経質だったり社会人一年目であったりと、悩みが絶えない。カフェで偶然知り合った黒島先生によく相談ごとをもちかける。  

マークは今回のストーリーで登場する人物 

 

 

〇善悪をいかに判断するのか(ストーリー編)

いつものカフェにて

藤山「先生、こんにちはー!」

黒島「こんにちは 今日は、どうされましたか?」

藤山「実は、哲学と言えばの王道の問題があるなーということに気が付いてしまって」

黒島「ほう? いったいなんでしょうか?」

藤山「哲学と言えば、やっぱりトロッコ問題が有名かなと思いまして!」

黒島「なるほど、トロッコ問題ですか 故障したトロッコがこのままAの道に進んでしまうと五人が引かれてしまう あなたは、レバーを引いてBの道に変更することができるけど、そこには、一人作業員がいてその場合は、作業員が引かれてしまう あなたは、どうするかという問題ですね」

藤山「それです! これって昔の哲学者達は、何か言ってたりするんですか?」

黒島「直接トロッコ問題について何か言っているわけではないですが、何人かはトロッコ問題を前にしたとき主張をしてくれそうな哲学者は、何人かいますね」

藤山「おー!是非、誰か教えてください!」

黒島「誰から紹介するか迷いますが、分かりやすいところでイギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムの『道徳および立法の諸原理序説』から説明していきましょう」

藤山「よろしくお願いします!」

黒島「トロッコ問題筆頭に、こういう道徳の問題は、善悪の判断基準をどのように設置するかで各自主張が異なっています その中でも、ベンサムの規準はシンプルで、快楽・幸福が増加するなら善で、それを妨げたり、不快・不幸をもたらすことは、悪だと言っています」

藤山「善悪の規準は、善と幸福が増加するか否かによるものだと?」

黒島「えぇ、その通りです このことをベンサムは、「功利性の原理」という言葉で説明しています」

「功利性の原理とは、その利益が問題とされている人々の幸福を増進するか、低減させる傾向があると思われるあらゆる行為を是認するか、否認するために使われる原理である。言い換えると、人々の幸福を増大させるか、それを妨害する傾向があると思われるあらゆる行為を是認するか、否認する原理なのである。」(28

黒島「さて、以上を踏まえるとベンサムだったらトロッコ問題について、どのように回答すると思いますか?」

藤山「より幸福が多く、不幸が少なくて済む選択をすると思います…となると、ベンサム的には、レバーを引いて一人の作業員を犠牲にするという善悪の判断になるということでしょうか?」

黒島「その通りです 非情な判断にも感じてしまいますが、快苦の増減という功利性の原理から考えるとこのような判断をせざるを得ません」

藤山「なるほど…」

黒島「ベンサムは、快苦の総量を念頭において計算し、その結果から善悪の判断をすべきだと主張するあたりシンプルで分かりやすいのが強みです 他方で、快苦や幸福の増減を計算して計ることなど可能なのかという疑問が当然生じます」

藤山「ベンサム自身は、快や幸福を計算可能だと考えていたのでしょうか?」

黒島「可能だとベンサムは、考えていましたね 実際に以下のような観点から計算できると本書で記されています」

①強度②持続性③確実性と不確実性④獲得・達成までの長さ⑤(別の快不快を生じさせるかという意味での)多産性⑥純粋性(反転リスク)⑦範囲(90-92

藤山「なるほど…ベンサム本人は、真剣に功利性の原理を考え、快苦が計算可能だと考えていたというのが伝わってくるリストアップですね」

黒島「まさに これがベンサムの魅力でもありますね しかし、功利性の原理が万能か否かは当然議論があるわけで、またいつかベンサムとは、異なる哲学者でトロッコ問題について考えてみましょう」

藤山「是非、よろしくお願いします!」

 

〇プチ解説

ベンサムの『道徳および立法の諸原理序説』は、タイトル通り道徳と法律の原理は、何かということを探究した一冊です。道徳の原理が何かという点は、今見てきた通り功利性の原理(快苦の増減から行う道徳判断)であり、ベンサムは法律もこの原理に即して立法すべきだと考えています。故に、本書の約七割は、法律論・政策論になっています。

 

参考文献

ベンサム著 中山元訳『道徳および立法の諸原理序説』、ちくま学芸文庫、2022

サンデル著 鬼澤忍訳『これからの正義の話をしよう』、ハヤカワノンフィクション文庫、2011

茂泉昭男著『西洋倫理思想史』、朝日出版社、1994

 

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