物語でサクッとリチャード・ローティ『偶然性/アイロニー/連帯』#26

  • URLをコピーしました!

〇登場人物紹介  

黒島よしのぶ  

いつも黒色ベースの服装に黒縁眼鏡を基本装備とした渋み溢れる人物。大学の先生らしく、近くのカフェでコーヒー片手に哲学書を読んでいることが多い。  

★碧山アカリ  

趣味で哲学、文学、心理学といった人文書を読み漁っているお姉さん。黒髪セミロングに切れ目とクールな見た目だが、困っている人を見ると放っておけない性格。   

★川崎こうへい  

アカリの隣の家に住む中学生。学校や両親との関係などなど年相応の悩みをもっており、アカリが良き相談相手になっている。  

藤山リカ  

社会人一年目の新卒。やや神経質だったり社会人一年目であったりと、悩みが絶えない。カフェで偶然知り合った黒島先生によく相談ごとをもちかける。  

マークは今回のストーリーで登場する人物 

 

 

〇(ストーリー編) 

川崎「連携とか協力って大切なことだよね?」

碧山「あるに越したことは、ないわね」

川崎「だよね…」

碧山「何かあった?」

川崎「特別何かがあったわけじゃないんだけど 最近、クラスでまとまりが出てきて、連携力あるなーと思ってるんだけ、なんか自分でもよく分からない怖さがあって…」

碧山「なるほど」

川崎「僕の考えすぎかな?」

碧山「どうかしら 実際、まとまった集団が暴走してしまう怖さってのは、あるわけだし、危機感を持っておくのは、大切なことだと思うわ」

川崎「やっぱり、そう思う? 集団が暴走しないようにするには、どうすればいいのかな?」

碧山「リチャード・ローティという哲学者なら、「リベラル・アイロニスト」であるようにしなさいって言うわね」

川崎「リベラル・アイロニスト???」

碧山「ローティの主著は、『偶然性/アイロニー/連帯』って本なのだけれど、そこでの「リベラル・アイロニスト」とは何かについて要約するなら、①最高悪を「残酷」さと考える②懐疑を常に行っている、この二つを持つ人物のことね」

川崎「残酷さを最高悪として、懐疑を忘れない人のこと…それが、「リベラル・アイロニスト」だと」

碧山「集団というのは、ときに暴走して、残酷なことをしてしまうわけだけど、そうならないために(ローティが参照するところの)残酷さを最悪と考える「リベラル」が要請されるわ」

川崎「なるほど…」

碧山「そして、暴走した集団は、ときに「絶対的な正義」を掲げて、その正義において暴走するわけだけど、「アイロニスト」っていうのは、常に懐疑を忘れない人間のことだから、そんな「絶対的正義」なんてものは、認めないわけ」

川崎「たしかに…「リベラル・アイロニスト」は、そういう集団的な暴走に対する処方箋になりうるわけだ」

碧山「その通り だけど、ローティが凄いのは、それで終わらず、「連帯」という形での集団に重きを置いた点ね」

川崎「集団は、暴走するから気をつけろってだけで、終わらないんだ!」

碧山「えぇ そして、彼のいう「連帯」は、以下のように説明されているわ」

連帯とは、伝統的な差異(種族、宗教、人種、習慣、その他違い)を、苦痛や辱めという点での類似性と比較するならばさほど重要ではないとしだいに考えてゆく能力、私たちとはかなり違った人びとを「われわれ」の範囲に抱含されるものと考えてゆく能力である。

リチャード・ローティ著 斎藤純一他訳『偶然性/アイロニー/連帯』、岩波書店、2000 401頁引用

碧山「つまり、残酷さを最高悪としつつ、バラバラの個人のなかで、他者を「われわれ」と考えていけるような能力を「連帯」と言い表してるわ」

川崎「ローティは、どうして「連帯」の大切さを訴えるの?」

碧山「この点は、とってもシンプルな解答で、残酷さの軽減に「連帯」が利益をもたらしてくれるからよ 生きていくとどうしても、酷く理不尽なことに見舞われる その理不尽に対して、個人がアプローチできることなんてたかが知れてるし、その渦中にいる人間がうまく言語化できるかも怪しいとローティはいうの」

川崎「だから、「連帯」が大切になってくるんだ」

碧山「私たちは、社会という集団で生きていく以上、「リベラル・アイロニスト」と「連帯」の考えは、現代でも大切な概念な気がするわね」

 

〇プチ解説

「アイロニー」と「連帯」については、触れましたが本書の表題にもある「偶然性」については、こちらで軽く触れておくとします。と言っても、「アイロニー」の考えとほぼ密接で、今ある「道徳」「価値観」は、偶然性によるものだという概念です。換言するなら、「道徳」「価値観」は、絶対的で必然的なものではないとう話で、「アイロニスト」であるためには、ローティが言うところの「偶然性の自覚」が求められます。

 

参考文献

朱喜哲『バラバラな世界で共に生きる:リチャード・ローティの哲学』(NHK新書、2026)

リチャード・ローティ著 斎藤純一他訳『偶然性/アイロニー/連帯』(岩波書店、2000)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次